〈介護職・音楽療法士〉粥川 知美

ぶつかったり、離れたり、時には寄り添ったり。かけがえのない時間を共有する仕事です。

中学時代には休みが多い、という理由だけでボランティア部に在籍していました。部活動でお年寄りと一緒に過ごす中、自分が人との関りが好きな事に気づき、福祉が学べる学校に進学。そこで音楽を使って治療を行う音楽療法士の勉強を専門に学びました。学校の紹介で当施設を知り、介護の仕事をしながら音楽療法ができるし、同じ学校の先輩もいるからと入社を決めました。でも、入社前に先輩が退職してしまって・・・。いきなり不安になりましたが、たくさんの方々に助けてもらい、我ながら精一杯仕事をしていたと思います。今振り返ると一生懸命な割になかなか上手くいかず、当時の先輩方には「よく続いたな・・・」と思われているかもしれませんね(笑)。
今、後輩に教える立場になって初めてわかりましたが、介護の仕事の時間を割いて一人一人個性のある後輩を指導すること、また、思いを共有する事がどれだけ大変か。あの頃の自分を思い出すと失敗だらけで、「そりゃあ先輩も怒るなあ。」と、教える側の思いも理解できるようになり、反省しきりです。

コロナ下でも楽しめるような運動会を企画、最後に乾杯した時の皆の顔は私の宝物です。

普段は入居者さんの日常生活の援助を行っています。利用者さんの行動や発想は奇想天外なことも多く、毎日喜劇のようで面白いこともあります。しかし、意思の疎通ができる方ばかりではないので、その分コミュニケーションや信頼関係を築くことが難しいです。その人の生きてきた背景も考えて、できるだけその人になりきって、やりたいこと、やって欲しいことを考え、第三の手足になれるように、と常日頃から考えています。時には相手の気持ちになり切りすぎてしまうので都度反省しますね。

イベントの企画、運営も職員の重要な仕事です。コロナ下で運動会を企画した時には、制限がある中でも利用者さん、職員が一緒に楽しめるような競技を考えました。身体機能に差があってもいい勝負になるように、時にはアドリブでボーナスポイントを入れたりしながら全員が一つになって競技に取り組み、誰もが達成感を味わえるように進行しました。その甲斐あって、閉会式にヤクルトで乾杯した時の皆さんの満足そうな顔は、私の大切な宝物の一つになりました。

相手がいるからこそ、得られる体験を大事にしたい。

介護の仕事は、普段の生活では味わえない経験、出会いを得ることができます。

利用者さん、スタッフ共に今までそれぞれの時間を生き抜いてきた人とここで出会い、ここからまた、その人の新しい歴史を一緒に作ることができるなんて、本当に奇跡的なことだと思います。人と人なのでぶつかったり、離れたり、時には寄り添ったり、様々な状況がありますが、利用者さんはもちろん、職員ともそんな掛け替えのない時間を共有し、共に楽しく過ごすことが私の目標です。まだまだ日々成長中の私ですが、これからも利用者さん、私たち職員が自分らしく居られ、その人の個性を生かし生活できる環境を皆と一緒に目指したいと思っています。